効率化の裏には


 変化の激しい時代には、多くの情報を集めたうえで適切な判断を管理職がどれだけいるかが、企業の競争力を左右するようになる。
 いままでの管理職は情報の結節点としての役割が重要だったが、これからは情報を伝えるよりも、その情報から自分なりに意味を汲み取って新しいアイデアに結びつけるような役割が求められると神戸大学の加護野忠男さんは語る。
たとえば、コンピューターで販売データを見て、ある商品が売れていなかったとする。そこで「売れていないから、これは死に筋だ」と判断するだけなら、コンピュータでもできる。本当のプロは、値付けが適当だったか、販促の方法が間違っていなかったかなどと、いろいろなファクターを考えてから判断する。
 あるコンビニエンスストアでは、POSデータを見て弁当を発注するようにしたら、売り上げが逆に減ったことがある。それは、最後の1、2個は「売れ残り」としてお客さんが敬遠する傾向を念頭に置かなかったことからである。データを見て、2個余るから発注を2個減らせば、さらに2個余るようになり、段々と発注量が減り、売り上げも落ちただけである。



自分を捨てて勝った人


 外務員で年間マージン4800万円以上を稼ぐ人だけが入会できる「トップ・オブ・ザ・テーブル」(世界で200人)の終身会員である三井生命京都支社の吉田登美子さんは、捨てて勝った経験を次のように語る。
「会社でトップになって三年目に胆石の手術で輸血から肝炎にかかって三ヶ月入院するはめになった。その病気をきっかけに、以前には相手を思いやる気持ちより、自分のことを思いやる気持ちのほうが強かったが、契約数字という我欲を捨てることができた。
その結果として、仕事における人さまとの関係も打算とか欲を超え、情のあるものに変わったようです。
そうなると、これまでは『また保険かいな。吉田さんは自分の金儲けのことばかりや』と思われていた方も、保険が二の次と分かれば、初めて心からの深いお付き合いをしていただけるようになります。それがまた、いい結果に結びつくのです」
人間は、どうしても我利とか我欲が先立ちがちだ。そうすると、相手の我利とか我欲とぶつかりあってうまくいかない。その時、自分を捨ててみるとうまくいくものである。



後味勝負


 あるレストランのシェフが、味には「前味」「中味」「後味」があると言った。
「前味」とは、なんと感じのよい店だろう、一度入ってみようと思わせる味である。
「中味」とは、応対も含めた「おいしかった」と満足していただく味である。
「後味」とは、お店を出る時に、またこの店に来て見たいと思っていただく味である。
 どんな商売や仕事であろうと、この三つの味が揃って初めて、心の籠もった仕事、繁盛する企業になると思う。
 私の経験から言うと、「前味」「中味」に気を配っているお店や企業は沢山ある。
「前味」は、店舗の設備(ハード)などでつくることができる。「中味」も、技術的な問題(ソフト)で、その道で一生懸命に努力すれば可能である。
 難しいのは「後味」だ。お店に入ってしまえば、買ってもらえば事は済んだとばかりに、「後味」の悪い思いをすることがよくある。それでは何事も長続きしない。
「後味」は、お客さまの後ろ姿に感謝する心掛け(ハート)にあると思う。結局は、ハードウェアとソフトウェアとハートウェアの三位一体が大切である。