
オオヌシ様
赤井夕子(あかいゆうこ)、二十歳。この春から大学一年生。
眼がくりくりとしたタヌキ顔が子供っぽく見えるおかげで、年を言わなきゃ誰も二浪と思わない。
夕子という名前は『赤い夕日が校舎を云々』とかいう懐メロから祖父がつけたらしいけど。
幼い頃からのあだ名は「赤いタコ」、略して「赤タコ」または、そのまま「タコ」。
そうだよね、そうなっちゃうよね。
そして、その名前のせいではないだろうけど――
「……ひゃうんっ!? あひゃぁぁぁぁぁっ……!?」
人の腕ほどの太さもあるタコの足がぬるぬると、夕子の両乳房を舐めるように撫で回す。
ご丁寧にもちゅぱちゅぱと、吸盤で乳首を吸いながら。
別の足は夕子に覚悟を促すように、つんつんと尻穴を突っついてくる。
「ひゃあっ!? おしりらめっ! おしりらめぇぇぇぇぇ……!!」
悲鳴を上げる夕子の頭の中に声が響く――いまや彼女と「同化」した《オオヌシ様》の声が。
『何がダメなものか。我らは五感を共有しておるのだ。ほれ、欲しくてたまらないのであろう』
ぬぷり……ぬぷぬぷと、尻穴のすぼまりを難なく押し拡げ、タコの足は夕子の腸内に呑み込まれていった。
「あへぁっ!? らめっ……んひぃぃぃぃぃっ♪」
夕子は随喜に泣き咽びながら、囚われの肢体をわななかせる。
彼女は四本の長大なタコの足に手足を絡めとられて、宙に吊り上げられていた――
そのタコの足は乳房や尻穴を蹂躙するものと同様、彼女自身の女陰から生え出ているのだが。
奇妙にもあるいは器用にも、タコの足は女陰から生えた付け根の部分では半分ほどの太さに縮まっていた。
とはいえ人の腕の半分の太さのモノを八本も銜え込んで、夕子の女陰は無惨なほど拡げられている。
そう、タコの足は八本。四本は夕子の手足を縛め、二本は左右の乳房を舐り、一本は尻穴を犯している。
そして残る一本は夕子の唇をなぞり、口腔奉仕を強いようとしていた。
『ほれ……銜えるのだ。五感を共有するということは、我の味わう快楽を、ぬしもまた味わうということ』
「いやぁぁぁ……せめてお醤油とワサビつけてぇぇぇ……♪」
『弄(いろ)うな。ほれ、覚悟いたせ』
「んぁむっ!? んぁぁぁぁぁ……っ♪」
タコの足を口にねじ込まれ、夕子は快感に打ち震えた。
吸盤が舌にこすられる感触が《オオヌシ様》を介し、性の歓びとして伝わってくるのだ。
タコの足を口いっぱいに頬張り、ぎこちないながらも懸命にそれを舐り上げる。
乳房と尻穴を同時に責められ、意識が飛びそうになりながらだ。
「んくぅぅぅぅぅ……♪」
ここは夕子の下宿であるワンルームマンション。
二浪の末に手に入れた大学生活――その四年間を過ごすべき自室で、彼女は肉体を弄ばれているのだった。
もとより、それを覚悟しての下宿暮らしであったのだが。
それを示すように、この部屋にはベッドがない。
《オオヌシ様》と同化した夕子は睡眠を必要とせず、毎晩、夜通し犯されているのである。
さらには、いまのように昼間でも、休講で時間が空けば大学から徒歩七分の自室に帰って犯される。
《オオヌシ様》が夕子を犯したいと望んだときは、夕子の身体も疼いてしまうから拒絶という選択肢はない。
「んくっ♪ んくっ♪ んくぅぅぅーーーっ♪」
眼の前で白い光が弾けたように感じて、夕子は、びくっびくっとその身をのた打たせた。イッたのだ。
ちゅぷり、ぬぷりと、口と尻穴を犯していたタコ足が抜けて、夕子は恍惚と吐息をつく。
「ぷはぁぁぁぁぁ……♪」
夕子の身体がゆっくりと床に下ろされて、手足や乳房を縛めていたタコの足がほどけていった。
夕子は足腰に力が入らず、ぺたんとその場に座り込んでしまう。
タコの足は、するすると彼女の女陰に引っ込んでいく。
夕子はタコ足が収納されていく自らの股間を見下ろして、
「あはっ♪ 四次元オマ○コ♪」
『我のほかは迎え入れさせぬがな。ぬしは一生涯、人間の男を知らずに生きるのだ』
「ふふっ、わかってるって♪ 《オオヌシ様》に拾われてなきゃ、無かった生命だものね♪」
夕子は微笑む。
二度目の大学受験に失敗して、二浪が確定した翌日。
夕子は、海を訪れていた。
初めから死のうと思って来たわけではない。現実逃避したかっただけだ。
それでも、岬の先端の誰もいない展望台から冬晴れの海を眺めているうちに、ふと思いついてしまった。
ここから飛び降りれば、いろいろ楽になれるんじゃないかと。
夕子は後先も考えずその思いつきを実行に移し、すぐに激しく後悔した。
岬から十数メートル下の海面に叩きつけられた衝撃は相当のものだったが意識を失えるほどではなかった。
次の瞬間には鼻と口から大量の冷たい海水を吸い込み、息ができなくなった。
痛い! 苦しい! 死ぬ! 嫌だ! 誰か……助けて!!
そして、《オオヌシ様》に拾われたのだ――
夕子はシャワーを浴びながら、胎内に棲むモノに話しかけた。
「……あの、《オオヌシ様》?」
『何だ?』
「その……よかったです」
頬を朱に染めながら言う夕子に、《オオヌシ様》は呆れたように、
『ふむ……ぬしは時折おかしなことを申す』
「おかしいですか?」
『我らは五感を共有しておる。ぬしが絶頂に至るほど快感を味わったのは我にも伝わっておるのだぞ』
「そういう意味じゃなくて、わたし、《オオヌシ様》に感謝してるというか……」
『ふむ?』
夕子と同化したタコの妖(あやかし)は興味深げに相槌を打つ。
『確かに我は、ぬしの生命を救い、受験に必要な英単語や公式を暗記し、本番で幾つか問題も解いたが』
「その分、勉強時間を削って犯されましたけど、そのことでもなくてですね……」
夕子は愛おしげに眼を細め、《オオヌシ様》を宿した腹を撫でた。
「わたし、《オオヌシ様》のおかげで女の歓びを知ったというか、女に生まれてよかったと初めて思えた」
『それは快楽という意味ばかりではなさそうだな……ふむ』
「もちろんそれだけじゃないです。自分が生まれ変わったのがわかるんですよ」
だって、と、夕子は自嘲ばかりではない笑顔で言葉を繋ぎ、
「《オオヌシ様》と出会う前のわたし、デブでバカで根暗で、どうしようもなかったですもん」
『確かに出会うた頃、ぬしは土左衛門のようであったな』
「土左衛門って水死体? 《オオヌシ様》それ言いすぎでしょ」
夕子はくすくす笑う。
「でも毎晩エッチしてるおかげで、すっかり体重は落ちたし、いくら食べても太らなくなったし」
『ぬしは怠惰に過ぎるのだ。受験生の頃からして、勉強を始めたと思ったらすぐに飽きて菓子など貪りおる』
「《オオヌシ様》だって、そんなわたしを犯しまくったじゃない? 遊んでる暇があるなら犯すぞって」
笑う夕子に、《オオヌシ様》は『む……』と低く呻き、
『ぬしは、よく笑うようになったの。初めの頃は、口を開くことも大儀そうにしておったのに』
「いまは毎日、楽しいですもん。大学の友達ともうまくやれてるし。あのね、やっぱり女は見た目ですよ」
『ふむ……?』
「周りの態度が違いますもん。友達もそうだし、街で買い物するときなんかも。デブだった頃と、いまとは」
『それは、ぬし自身が変わったからではないか。笑う門には福来たると昔から申してな……』
《オオヌシ様》は答えながら、夕子の女陰から再びタコ足を伸ばし、ちゅるりと陰核を撫でた。
「ひゃっ!? 《オオヌシ様》っ!?」
『ぬしが可愛らしいことを申すでな、再び犯してやりたくなった』
ちゅぷちゅぷと吸盤で陰核を吸われ、夕子は身悶える。
「ひゃぅっ!? ダメっ……次の講義に間に合わなくなっちゃうっ!!」
『友人にメールで代返を頼めばよかろう。いまのぬしなら、それくらい頼める相手は、いくらでもおろう?』
「それはそうだけど……はぁぁぁんっ!?」
『ほれ、早よう風呂場を出て友人にメールいたせ。ぬしが正気を保っておられるうちにな』
「ひゃぁんっ!? クリは弱いのぉっ、ダメだってばぁ、言うこと聞きますから、赦してぇぇぇ……!!」
夕子は腰が抜けそうになりながら、壁に手をついて辛うじて身体を支え、ふらふらと風呂場を出る。
生命を助けられて、大学にも合格できて。
《オオヌシ様》には感謝してるけど、代償も充分、払ってるよなあ。
よがり乱れる寸前の頭の片隅で、夕子は思うのであった。
【終わり】