予備知識その1  「居飛車穴熊」とは?  (2005年記)

「居飛車穴熊」とは?

三間飛車のみならず、すべての振り飛車の天敵、「居飛車穴熊」(第1図、第2図)。 一般に、△4四歩を突くと△4三金型穴熊となり、突かない場合は△4四銀型穴熊となります。 玉の固さは基本的に△4四銀型のほうが勝ります。

三間飛車は、四間飛車の「藤井システム」(詳しくは「藤井システム - Wikipedia」「鰻屋本舗:藤井システムとは - 藤井猛九段公認応援サイト」を参照下さい)のような強襲策を持たないため、居飛車側は相手の角筋に用心する△4四歩型を用いる必要性があまりありません。 そのため、居飛車側はほぼ△4四銀型のほうを目指してきます。 ただし、「4筋位取り美濃囲い」を嫌って△4四歩を突くケースはあります。

囲いの完成形は、第1図のように2枚の金が3一・3二の位置にあり、玉の周りにぴったり張り付いた形。 最近ではここまでがっちり囲うケースは少なく、5一金・4一金型や、3二金・4一金(6一金)型で戦いが始まることが多いようです。

ただし、三間飛車側も穴熊を目指す「相穴熊」(後述)の戦型の場合は例外で、お互いに仕掛けづらく玉形の整備にとことん走り、 第2図(△2三銀型)のようにさらに囲いが進展することがしばしばです。 加えて、4四の銀が3三までくれば、俗に「ビッグ4」と呼ばれる超堅陣となりますが、さすがにそこまではなかなかいきません (銀を3三に引いてしまうと、中央の備えが手薄になるため)。

では次項より、三間飛車VS居飛車穴熊の主な戦型を紹介していきます。

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予備知識その2  真部流  (2005年記)

真部流

VS居飛車穴熊、まずは「真部流」(第1図)です。 「将棋世界」誌上で「将棋論考」を連載(2005年現在)されている真部一男先生が愛用していたためこの名が付いた、とされています。

居飛車側が四枚穴熊に組むのを、あえて阻止せず(△5三銀の時点では▲4五歩とは突かない)目一杯手数をかけさせる代わりに、 三間飛車側は4筋(後手番ならば6筋)の位をとって▲5七銀型から▲4六銀と上がる(この銀上がりが特徴であり急所)、 4筋位取り「四枚」美濃囲いを目指す構想です。 「四枚」と強調したのは、▲4六銀と上がることでより玉に近くかつ制空権を握ることができる、ということを強調したいためです。

「真部流」は、「コーヤン流」と区別があいまいになりがちですが、私は以下のように考えています。

次項でも述べますが、コーヤン流は四枚穴熊を阻止することが必須条件。 四枚穴熊以外の居飛穴側の様々な布陣に対する一連の構想を指します。

一方真部流は、四枚穴熊歓迎という「誘いの隙」を撒き、居飛車側がこれに乗ってきた場合にのみ用いることができる作戦であり、 △6四銀から速攻でこられた場合には使えません。4筋位取り「四枚」美濃に組み上げる前に攻められてしまうからです (△6四銀型に対しては中央制圧ができないため、4筋位取り「四枚」美濃に組むメリットが小さいという見方もできます)。

真部流に組んだ後の戦い方の方針は、居飛車側の金銀を玉の方に偏らせたのを逆手に取り、中央(5筋)を制圧しにいくことです。 ▲4六銀の形を活かして▲5五歩から揺さぶりをかけ、相手の攻めを誘います。 この相手の大駒だけの攻めを完封できれば、それに越したことはありません。 「穴熊の姿焼き」で圧勝です(相手が投了しない場合は、と金攻めを仕掛けましょう)。 そうはならず大駒のさばき合いになった場合は、玉の固さでは負けているものの、 玉の広さ、中央の勢力を活かして攻め合いを制することを目指します。

また、角と左桂をうまく使うことも、この戦型を戦う上での大きなポイント。 5九から2六へ角を展開したり、桂の2段跳ねで5三の地点を狙ったりするのが、華麗で理想的な攻撃の展開です。

ちなみに私はこの「真部流」を愛用しています。居飛穴は鉄壁ですが、何より4筋位取り美濃の布陣と、中央指向の攻めの構想が美しい。 ただし最近は、四枚穴熊に囲える隙を与えても居飛車側が四枚穴熊を目指してくれない(すなわち真部流を狙えない)ケースが多いような気がします。

2008年追記:
惜しむらくも、真部先生は2007年にお亡くなりになりました。心よりご冥福をお祈りいたします。

●参考文献:
 「三間飛車道場〈第1巻〉居飛穴VS5三銀 (東大将棋ブックス) 」
 「三間飛車ガイド(週将ブックス―定跡百科)」

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予備知識その3  コーヤン流  (2005年記)

コーヤン流

続いては「コーヤン流」。コーヤン流と一口に言っても、居飛穴側の陣形によってコーヤン流の布陣は姿を変えます。 居飛穴側の陣形として、主に下記の4パターンが挙げられます。

@△6四銀・△3三角型(第1図)
A△4四歩型(第2図)
B△5三銀・△4二角型(第3図)
C△6二銀・△4二角型

なお他に、5一まで角を引く形もありますが、これに対するコーヤン流は体系化されていないようです (単に書籍で取り上げられていないだけで、中田功先生は当然対策を用意しているでしょうけど)。 ここでは@からBまでの3パターンに対するコーヤン流を紹介します。Cについては次項で。

まず第1図は、@△6四銀・△3三角型。▲3七桂(3三角と5三銀の両取り)に対し後手が△6四銀と上がり、 そこで先手が▲1六歩と突いた局面。 △6四銀に対しては、▲4五歩とは突きません。後手の△7五歩からの速攻に対し、 ▲4五桂以下の反撃の含みを残しておくためです。 また、仮に後手がすぐ仕掛けてこないにしても、△6四銀型に対し▲4五歩〜▲4六銀と4筋位取り美濃囲いを築いても、 中央制圧が難しく効果が薄いという理由もあります。 もちろん▲3五歩からの攻めもあるので4筋位取り美濃は効果的ではありますが、 それよりも穴熊の急所である端のほうを急ぎ、▲1六歩とするのです。

第1図以下は、一例として以下の手順が挙げられます。

第1図以下の指し手
        △7五歩
▲4五桂  △4二角
▲6五歩! △同 銀
▲6八飛  (図略)

これは三間飛車側有利。手順中、△4二角のところ△4四角でも▲6五歩です。

続いて第2図は、A△4四歩型。これに対しては図のように早速▲4五歩と突きます。 △4五同歩では▲同桂で両取りですので、△4三金▲4六銀と進みます。 以下どこかのタイミングで▲4四歩と取り込み、△同銀(同金)▲4五歩となって4筋位取り美濃囲いの好形に組むことができます。 ただし後手も一歩を手持ちにできるため、一概に作戦勝ちとは言えません。

最後に第3図は、B△5三銀・△4二角型。▲3七桂に対し、両取りを避ける△4二角。 そこで図の▲4五歩が、四枚穴熊を阻止するコーヤン流の一手です(まあ自然な一手とも言えますが)。 以下は端歩を突いた後▲4六銀とし、▲3五歩〜▲3五銀から▲2五桂を狙います。 もちろんその間に居飛車側からの斜め棒銀の攻めがあるので、それを軽くいなしながらうまく戦う必要があります。

●参考文献:
 「コーヤン流三間飛車の極意 持久戦編」
 「コーヤン流三間飛車 実戦編」

次項では、C△6二銀・△4二角型とそれに対するコーヤン流の構想について紹介します。

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予備知識その4  △6二銀・△4二角型  (2005年記)

△6二銀・△4二角型

2004年度から本格的に指され始めた、三間飛車に対する居飛穴の新構想。それが△6二銀・△4二角型です。 従来もこの構想はあるにはありましたが、それは第1図のように2枚の金まで穴熊をしっかり完成させてから△4二角と引くものでした。 この戦いについては、 「コーヤン流三間飛車 実戦編」 で紹介されています。

これに対し新構想では、第2図のように銀は6二で、金は動かさない(1・2手なら動かしても構いません)まま、早々と角を引きます。 第2図以下、一例としては下記の通り。

第2図以下の指し手
▲5七銀  △7四歩
▲6五歩  △7三桂
▲6八飛  △5三銀 (第3図)

▲6五歩に合わせ△7三桂。以下桂跳ねを受けるため▲6八飛としますが、居飛穴側の早い角引きと桂跳ねのせいで、 三間飛車側は形を決めさせられた格好です。最後の△5三銀は、△4四銀からの四枚穴熊を見せた手。 または、△6四歩からの6筋の攻めも見せています。

第3図から、三間飛車側としては△4四銀を防ぎ▲4五歩と突くか、▲2八玉と囲うか、▲1五歩と端を急ぐか。 悩ましいところです。居飛穴側は、適当に金を移動(一般的には△3二金→△5一金→△4一金という順番)させながら、 頃合いを見計らって仕掛けてきます。

この例では三間飛車側が先手番ですが、後手番の場合はこれより一手遅れ、苦しい戦いを強いられているようです。優秀な対策が待たれます。

●参考文献:
 「最新戦法の話 (最強将棋21)」

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予備知識その5  相穴熊  (2008年記)

相穴熊

居飛車穴熊に堅さ負けしたくない、という人にとってうってつけでしょう。振り飛車側も同じく穴熊に組んでしまいます。 振り飛車側の穴熊なので、一般に「振り飛車穴熊」と呼びます。そして、両者穴熊の戦型を一般に「相穴熊」と呼びます(第1図)。

戦いを起こす主導権は一般に居飛車側にあり、居飛車側が仕掛けを保留し続ける場合、第2図のようにお互いさらに囲いに手をかけ、 ▲2七銀型(△2三銀型)穴熊に発展することもあります。

振り飛車穴熊を目指すのであれば、まずは左辺にはあまり手をかけずに、 とっとと玉を1九に潜り▲2八銀とハッチを閉めることを優先した方が良いでしょう。 穴熊囲いが不十分なまま居飛車に戦いを起こされると、収拾がつかなくなる恐れがあります。

振り飛車側の左辺は石田流に組むこともできます。 が、当然石田流は組み上げるまでに手数がかかるため、上述の説明の通り囲いがおろそかになる危険性があります。 また、石田流は左辺に駒が片寄る上、縦に伸びた軽い形。 右辺に駒が片寄る振り飛車穴熊と組み合わせると中央が手薄くなります。 そのため「石田流+穴熊」は指しこなすのが難しいといえます。

三間飛車穴熊VS居飛車穴熊の参考書籍はあまり無い気がします。以下の書籍くらいでしょうか。 このうち 「中飛車道場〈第4巻〉6四銀・ツノ銀」 では、タイトルの通り厳密には中飛車穴熊VS居飛車穴熊が紹介されているのですが、 三間飛車穴熊からも同様の形に持ち込める変化(PAGE7のMEMO27「めぐたん流▲4六銀型」参照)が紹介されているため、三間穴熊党にとっても参考になります。

●参考文献:
 「下町流三間飛車―居飛穴攻略の新研究 (振り飛車の真髄)」
 「とっておきの相穴熊 [マイコミ将棋BOOKS]」
 「中飛車道場〈第4巻〉6四銀・ツノ銀 (東大将棋ブックス)」

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